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私の 古い情報、古い感情

一昨年の秋、娘が「留学費用を貯めたい」ということで家へ戻って来て以来、我が家の食事のメニューは “娘の好むもの” が中心になっていました。
肉体的にとても疲れて帰ってくるので、美味しく食べられるように喜ぶものを作ってやろう、嫌がるものは出さないでおこう、と心掛けていました。

昨日のこと。無性に 絹さや が食べたくなった私は、娘がそれを嫌いと分かっていたのに買ってきて、卵とじにして食卓へ出したんですね。娘が食卓に着くなり「ごめんね、嫌いでしょうが、おつきあいを!」と言い訳すると、娘がこう言うのです。

「は? 好きだけど?」

「え? 嫌いだって言ってたじゃない? おーーえーーっ!って感じだったじゃない?」と言うと、

「それ、子どもの頃のことでは? わたしもう30だよ?笑」
「もしや、ナスも嫌いだと思ってる?」

・・・はい、思ってました。思い込んでました。

「やっぱりねー。どうりで、絹さや も ナス も、食卓に上がらないなぁと思ってたヨ。今はどっちも好きだからね!」と言って笑われました。

古い情報、アップデートができてませんでした。

先日は、息子に電話で、実家に置いていった物いくつかの 処分の可否を尋ねていたときに、

「母さんさ、昔アナタが退学した中学校のサブバッグを捨てるのに、布の部分と金属の部分を切って分けてたら、『毎日持って通学してた思い出のカバンを、そんなふうに切り刻むなんて、ひどいなぁ・・・』って言われて、あ!しまった!繊細なこの子をまた傷つけちゃった・・・って狼狽えて謝ったこと、今でも街であの学校の生徒を見かける度に思い出して、胸が痛むんだよね・・・」

そう言ったら、

「え? なんの話? 要らなくなったバッグを分別して捨てただけのこのでしょ? 何とも思わないけど?」
「もう今後一切、胸を痛めたりしなくていいからね!」

と言って、私の心にあった ひとつの “黒い重い塊” を、粉砕してくれたのでした。

子どもは知らぬ間に変化して新しくなっていたのに、母の方は、いつまでも古い情報、古い感情を抱えたままでいた、という話でした。

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