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「すべての『私』の物語」を肯定する物語_『カムカムエヴリバディ』

半年間、毎日熱心に視聴してきた朝ドラ『カムカムエヴリバディ』がきょう終わりました。
ヒロインが3人交代して務めるという朝ドラ史上初の形をとった百年の物語で、ラジオ英語講座とともに歩んだ母娘孫三世代の人生を描いた本作でしたが、良いお話を見せてもらったなぁと思い、余韻に浸っています。

終盤の回ではよく泣きました。昨日なんか、トミーの粋な計らいに泣き、るいの歌声に泣き、小暮さんの「ジョーの音や…」に泣き、お母さんに気づいたるいの上ずる声に泣き、ジョーの「るいさんを産んでくださってありがとうございます」に泣き、あの神社で語らう勇ちゃんと安子に泣き、安子は亡き稔の夢を叶えたのだなぁと思って泣き、そうかそもそもこのドラマ「A long ago…」で始まるラジオ英語講座のお話だったのかと気づいて泣き……、もう朝から大変なことになりました。

あとからあとから思い返されることがあり込み上げるものあり…ですが、観終えていま特に心に残っているのは、
ひとつは、ヒロインの一人・るい(演:深津絵里さん)が叔母にあたる雪衣さんに言った「みんな、間違うんです」(だから、もう自分を責めないでください)という言葉です。
そうなんだよな…と思いました。私も間違う。あなたも間違う。みんな、間違う。
あの台詞は、長い間固めて封印してきた過去を ほどいてとかしていく段階に来ていた るい だからこそのものだったと思います。人にそれを言えた るい はあのとき既に、自身の誤り(思い違い)に気づき、行いを悔い、そして自身を赦し、救うための道の途上に入っていたことがよくわかりました。毎日毎日、あんこを作り、ラジオ英語講座を聴き…、家族や周囲の人たちと築いてきた日常の力が確かにあったからこそ、言えた言葉だったと思いました。

人は間違うけれど、「意味があるかどうかわからんことをやる。誰かのことを思いながらやる。それでええんちゃう?」(一子が るい に言った言葉です)・・・、これは、このドラマが視聴者に伝えたメッセージのひとつだったかと思います。

それから、過去を断ち切って生きてきた安子(演:上白石萌音さん→森山良子さん)。
どれだけ逃げても “過去は追ってきた” わけですが、なお逃げてしまおうとした安子を追いかけ、追いつき、捕まえ、そして るい のところへ連れていったのが、孫娘の ひなた(演:川栄李奈さん)だった…というのがもう・・・、ほんとに凄い脚本だと思って唸ってしまいました。
自分の母親と祖母の間にあった出来事、重い物語を知った孫娘ひなたは、逃げる祖母を、逃がすまじ、と追い、背負って母の元へ連れていきましたが、そんな ひなた を育てたのは るい で、るいがひなたのことを、強く優しい「ひなたの道」を行く娘に育てることができたのは、るいには、母の安子が(6歳で「I hate you」と言ってしまい別れてしまってはいても…)自分のことを愛し育ててくれた記憶が心の奥に確かにあったからでしょう。
そこのところの表現、演出が、なんとも素敵でした。

私はドラマ好きですが、良いドラマに出会えると、心が膨らんで潤って元気になります。
人というもの(その愚かさ、美しさ…)、そして人の人生というものへの愛が感じられるドラマが、私はとても好きなのです。

今回の『カムカムエヴリバディ』は、「すべての『私』の物語」と銘打たれていました。
私も含め、この物語を見届けたたくさんの人の心に残り、それぞれが自分の物語や誰かの物語を思うときに、ふと思い出すドラマになるんじゃないかと思いました。

人は間違えるし、願いや夢が必ず叶うわけでもない。それでも人生は続く。
選んだ道を歩き続ければそれでよい。そこに光は差して「ひなたの道」になる。
『カムカムエヴリバディ』は、そんなふうにすべての人の人生を肯定し応援する物語でした(スタンディングオベーション中)。

 

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