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近所のおじさん、おばさん

今から8年ほど前、築地のマンションで相談室をやっていたときに、「大学をやめ、ほぼ引きこもりフラフラしている息子」のことでご相談にいらっしゃったお母さんがいました。
お母さんが抱えている問題の解決が鍵、と思って面談を重ねつつ、息子のKくん(当時18歳)とも話をしてみたいと思い、無理かなと思いながらも打診したところ、思いがけずOKとのお返事をもらったことで、初めはオンラインで、その後 対面で、セッションを続けました。

あるとき、「子どもの頃から知ってる近所の大工のおじさん」と、コンビニで遭遇したときに、「暇してるなら、ちょっと手伝ってくれないか」と言われて、半ばしぶしぶではあったけれど、建築現場で手伝いをするをすることになった、という話を聞かせてもらいました。
Kくんは体格がよくて力がありそうだったし、手先が器用でクラフトが好き、と言っていたことを聞いていたので、しぶしぶでもなんでも、いいんじゃないかと思い、「よかったね。きっと良い体験になると思う」と伝えました。じつは、(言いませんでしたが)オーラのなかに、木材を扱い大工仕事をしている姿がちゃんと見えてもいたのです。

その後は、お母さんの方から、息子は仕事をやめずに働きに出ていて驚いている、というメールを一度いただいたきりになっていたのですが、先日、息子Kくんから、8年ぶりに連絡をいただきました。

文章をそのまま紹介されるのは恥ずかしいからNGだけど内容をブログで扱うのはOK、ということなので書かせてもらいますと、
Kくんはあの後、近所のおじさん(大工さん)から誘われて、家を造る現場で本格的に働き始めたそうです。
初めはほとんど役に立ってなかったはずなのに、ひと月後には生まれて初めて「少額の給料」をもらったこと、親方だけではなく現場の職人さんたちに可愛がられ仕事を教われたこと、自分が関わった初めての家の完成、施主さんがとても喜んで感謝してくれたこと、自分は誰かが喜んで使ってくれる物を作る仕事が好きでずっと勉強していきたいんだと知ったこと・・・、そういうことが、狭い部屋に閉じこもっていた自分をおもてに引っ張り出す力になったんだと思う、とメールに ありました。

身体をしっかり使う心地よさ、年上の大人たちから可愛がって育ててもらう体験、誰かが使う物を作って得られる充足感、人の役に立ってお金を稼ぐ喜び・・・。どれもが若い彼にとって、かけがえのない宝物になる体験だったに違いないです。おたより、ほんとに嬉しかったです。

いま私は、再放送している朝ドラ『カーネーション』と『カムカムエヴリバディ』を観ているのですが、朝ドラには、近所のおじさん、近所のおばさんが出てきます。これ、私の憧れなのです。
近所に自分のことを愛情深く見ていてくれるおじさんやおばさんが当たり前にいる、という環境の中で育つことができるのって素晴らしい。近頃それを強く思います。
お母さんとお父さんの足りないところをおじいちゃんやおばあちゃんが補う、さらに近所の おっちゃん や おばちゃんが見てくれていて、大事にしてくれる・・・。
この「層の厚さ」でこそ、子どもというのは、丈夫に、そして優しい人に、育っていくんだろうな・・・と思います。

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