■休暇のお知らせ■
8月28日(金)~9月3日(木)の1週間、休暇をいただきます。
ご不便をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
メールのご連絡(ご予約、お問合せ)にはお返事差し上げます。
すみません、今日はおかしな話を、だらだら書きます。
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私が通った中学校の制服は、白い丸襟ブラウスにエンジ色のリボン、膝下丈の紺色プリーツスカートに、同じ紺色のベスト(脇ファスナー)を着る、というものでした。もう45年前のことになります。
なかなかダサい制服だったのですが その原因は、ズドンとした形の(バストとウエストの部分の寸法に差がない)ベストのせいだと、ちょっとおしゃれに興味のある女子は気づいていて、こっそりお母さんに頼んでウエスト近くを摘まんで縫ってもらったりしていたものでした。私も自分でダーツを入れて着ていました。
で、ある時、1学年上の ”すごい美人で不良の” 先輩が着ている制服(・・・スカートの丈は長く、ベストも立体的で短めの作りになっていて素敵でした・・・)は特注したものだ、これは学校指定の制服を扱っているお店リストには載っていない、”街はずれにある洋品店” に行けば作ってもらえるらしい、という情報をゲットしたんですね。その先輩と同級のお姉さんがいる子から。
私は友達2人と一緒に、さっそく行ってみることにしたのですが、情報をこっそりくれた子が言うには、そのお店は夕方からしか開かないし、電話帳にも載ってないし、すごくわかりにくい場所にあるから、行きつけるかどうかわからないよ、と言う。「気をつけて行って来てね」とまで言う・・・。
変なことを言われて少々ビビりましたが、私たちはある日の部活動後、暗くなってから、場所を描いてもらったメモを手に訪ねてみました。
そのお店、あるにはあったのですが・・・、なんというか、今思うと木戸を開けたら空気の違う何とも言えない不思議な空間で、童話の世界のようでした。
年を取ったご婦人が「〇〇中学のベストね、あぁはいはい」と言って、私たちが希望したベストを奥から出してきてくれて、それは、サイズを伝えなかったのに3人それぞれの体にピッタリで、よかったね ♪ と喜んで買って帰ったのですが・・・
しばらくして他の子に教えたのですが、その子は、行ってみたけど もらった地図の場所にお店なんてなかった、と言うので、じゃあついて行ってあげるよと言って一緒に行ってみたら、その洋品店、ほんとにどこにもありませんでした。
確かにこの辺りだ、という場所の近くにあった小さな電気屋さんのおじさんに尋ねたら「この辺に洋品店なんてないよ」と言う・・・
そう言われてしまったら仕方ない、その日は、連れて行った友だちに謝って、狐につままれた気分で帰りました。
*
学年が変わって間もなく、私はまたそのベストを新調したいと思い、またその洋品店に行ってみることにしました。ある日の日没後。
そしたら・・・
そのお店、ちゃんとあったのです。
お店のつくりは以前来た時とは少し違っていた気もしましたが、お婆さんは同じ人で、前の年と同じように、ピッタリサイズのベストを一着、売ってくれました。
去年来たんだけどお店が見つけられなかった、と言ったら、お婆さんは「うちはわかりにくいし不定期営業でね・・・」と言うので、(なんだ、前回はやっぱり道に迷ったか見逃したか…だったんだな…)そう思って安心して帰りました。
でもでも、またしても後日、紹介した友達が行ってみたところ「やっぱり無かったよ」と言うので、んんん? 一体なんなんだ? 気味悪いな、と思いましたが、もういいよ、忘れよう、ということになり、実際忘れてしまっていました。中学生は忙しい。
*
それから何十年も経って・・・
先日たまたま、ふた駅先に家を建てて越したというママ友の新居に招かれて行ったのですが、その家の2階の窓から外を眺めていたら、例の洋品店があった場所と近いことに気づいたので、帰りがけに行ってみたんですね。ちゃんと日が暮れてから。
そうしたら、その路地の雰囲気は当時のままなのに、洋品店はやっぱりなくて、それどころか、ここではないか?と思った場所は、雑草が生い茂る、小さな空き地になっていて、なんだか雰囲気がおかしい・・・。
数軒離れた家からちょうどお爺さんが出てきたので、「ここに昔、洋品店はなかったですか?」と訊いたら、洋品店なんてない、もう何十年も空き地だよ、所有者は北陸の方だったかに居るらしいがよくわからん、と言う・・・。
なんだかもう、これは聞いても無理なんだ、と思いました。
そして、初めて気づいたのですが、その土地の奥の方には立派な木・・・ケヤキかな?が生えていて、あの木のウロに触れたら、きっと吸い込まれて時空を超えてどこかへ迷い込んでしまうんじゃないかな・・・という気がして、その場を離れました。
なんだったんだろう、あの洋品店。あのベスト。あのお婆さん・・・
あれは、銭婆(ぜにーば)みたいな魔女が商売してたんだろうか? うん、きっとそうだ。
〈おしまい〉
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