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「自分から自分を離さないこと」 吉本ばななさん

書きそびれていましたが、先月、NHKアカデミアという番組で「ベストセラー作家が語る “生きる知恵”  吉本ばなな」というのをやっていました。
私はばななさんの作品を好きなので 放送を知って録画予約してあったのですが、それを最近になって見ました。

番組のなかに、受講者さんたちの悩み相談に答えるコーナーというのがありました。
ばななさんの、執筆や人生の経験から得た “生きる知恵” が語られていて、とても興味深かったです。

ひとりの受講者さん(20代女性)からの、こんな質問がありました。

「自分は、唐突に不安に思うことがある。周りの人たちが、すごく楽しそうにしていたり成長していたりする姿を見ると、私はなんか全然できてないなぁと思って、この先どうなるんだろうとすごく不安になる。他人を気にせずに、自分の道だけを見つめていくためにはどうすればよいのか」

この問いに対するばななさんの回答はこういうものでした。

「私は、この世全体を、ひとつの体だと思っている。この世の人物全体が、私は脳の細胞、私は足の先の細胞、私は尻・・・みたいなかんじで、全員がいないと成り立たない、と思っている。
もうちょっと綺麗なたとえで言うと「森」。全員がいて、森
微生物とかコケとか、木とか木に棲んでる虫とか・・・。全部で森だからもう仕方ないよね、と。
たとえば、虫は木の上の方が羨ましいなぁと思う。違う景色が見たくなるだろうし・・・。根っこは葉っぱが羨ましい、光が当たって・・・と思う。
でも、そういうもの全部含めての森だから、自分もその中の一部だし、誰かは自分を羨ましいと思ってるんだろうし、もうキリがないというか、大きく見れば、意外に人と比べて苦しむ、ということがなくなる・・・」

ほんとにそう思います。みんなで世界全体。自分は世界のほんの一部。
自分は、”脳細胞じゃなくて足の先っちょ” かもしれない、”美しく際立つ花じゃなくて地味なコケ” かもしれないけれど、その、全体の中の ほんの小さなパーツ である自分を、受け入れて大切に全うしていくことなんだと思います。

それから、ばななさんは、「不安なときというのは、なるべく 自分から自分を離さない ほうがいいのだ」ということを話されていました。

「私たちはいま、電脳社会、情報社会のなかにいるから、自分から自分の気持ちを遠くに飛ばして、何かを見に行ってしまう。家にいながらにして、南極の様子をライブカメラで見れちゃうとか、そういう凄い時代。
そのこと自体は悪いことではなくて、そのときに気持ちを南極に持って行ってしまわないことなんです。
『いま自分は家にいて、南極をみているんだ』と言い聞かせる。
自分に自分をいつも寄せておいて、自分が現実にいる場所と現実の状態・・・たとえば、これが不安だ、来月や再来月、これがなくなったらどうしよう、仕事がなくなったら・・・とか、どうしても自分を先に飛ばしてしまうけれど、そういうときは、いや、自分はいま家にいる、食べ物もある、いま現在は安全だ、と言って聞かせる。
そうやっていつも確認していると、自分から自分が離れていかなくなる。そうすると、この現代の、わけのわからない不安状態から逃れられると思います」

不安というのは、自分から自分が離れてしまっているとき、自分の気持ちを先に飛ばしてしまうときに囚われてしまうものなんだ、という すごく大事なことを、回答として語ってらっしゃいました。

私たちはすぐに、過去や未来に自分の気持ちを飛ばしてしまいます。
でも、飛んで行って離れてしまう自分を、できるだけ いま・ここにいる自分に取り戻す。
これ、じつはすごく難しいから練習練習です。
かく言う私も、透視のスクールで学んだ時代、教師から繰り返し、「いまにいないわよ!」「戻ってきなさい!」と指導されました。そこで散々訓練して、here & now を自分に叩き込みました。

「この小さな私が私。これでいい」「いま・ここに全てある」ということを繰り返し確認しながら、
自分とどっぷりつきあって、肯定して、慈しんでいかれるよう、皆それぞれが励んでいかれたらよいな・・・、そんなことを考えた ばななさんのお話でした。

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