彼女たちそれぞれが経験した、人生のダウンタイム_Netflix『ダウンタイム』

観たい作品が増えすぎて我慢できなくなって、久しぶりに Netflix に再入会。
初めに観たのは『ダウンタイム』でした。

全8話。二日に分けましたが一気に観ました。
物語の前半では、美容整形の施術を望み受診する人たち、彼女たちの心理、そして美容外科業界の問題点が描かれていました。
もっと美しくなりたい若きインフルエンサー、いまどきは見た目も重要らしい声優の卵さん、がんで余命わずかだという老いた未亡人、綺麗になって離れて暮らす息子に会いたい女性、10歳若く見せたいという再選を狙う都知事など、さまざまな動機で美容外科を訪れる人たちの切実な欲求のひとつひとつに、唸らされました。
特殊メイクやVFXも凄いし、フェイスリフトのオペのシーンの “切ってめくって剥がして釣り上げて・・・” みたいなやつには「うっ!」となりました(自主モザイクかけました)が、そのおかげで “そうまでして変わりたい” 彼女たちの思いをリアルに感じました。

なかでも、離婚して息子を手放したママ(演:安達祐実さん)の「綺麗になりたい」強迫的な思い、
これまで自分のために生きてこられなかったけど最後くらいは自分のために・・・と危険を承知で大きな手術を希望した未亡人(演:研ナオコさん)の清々しくさえ見えた固い決意と術後の明るく美しいお顔、
夫から大切にされておらずたぶんもう女性として扱われていない、毎日我慢我慢の主婦(演:野呂佳代さん)が、娘から「ママは幸せなの?」と問われ、他人から見えるお顔ではなく女性器形成のオペを決めて臨み、終わった後、「なんで今までこんな簡単なことができなかったんだろう…」と、可笑しくなったと言って泣き笑いする姿には、心を打たれました。

この『ダウンタイム』は、天才的なオペ技術を持ちながら勤務していた大学病院を去り、やむを得ず美容外科で働くことになる形成外科医の沼田文(演:松岡茉優さん)と、「神の手」を持つ父親の老舗美容外科を継いでいる遠山凛(演:仲里依紗さん)が、凛のクリニックで、各々の信条・信念をぶつけ合い、対立しながら、患者に向き合い、己に向き合っていく姿が描かれています。

沼田は、母親(演:永作博美さん)から 自分は好かれていないと思い込んでおり、乱暴な口の利き方や態度でしか関わっていませんでしたが、母親が倒れ、記憶を失ってから亡くなるまでの期間は、長らくの感情が溢れ、本音を出して関われる穏やかな時間だったようです。亡くなって「ママ」「ママ」と母親を呼んで泣く場面では幼子のようでした。

凛の方は、幼いころ、テレビ出演もして有名人だった父親に「似ていない」と言われ虐められたりしていましたが、なんとか父親に認められよう、愛されようと、父と同じ美容外科医を目指し、努力して成功を収めるまでになっていましたが、じつはコンプレックスや恐怖を隠し持っていて、いつも追われ怯えている医師でした。

そんな沼田と凛は、出会ってからそれぞれが自分の身に起こる問題、葛藤を、逃げずに向き合い越えようとする過程で、徐々に変化していきます。

そして終盤、それぞれが辛い大きな出来事に見舞われるわけですが、苦しんだその後、二人それぞれが「ダウンタイム」を経て、人生の新しいステージに踏み出すラストになっていました。

美容外科手術には、術後の腫れや内出血などが引いて自然な状態に落ち着くまでの回復期間「ダウンタイム」というものがあり、それはイモムシが蝶になる前に、一度「サナギ」になる時間のようなもの。これは遠山美容外科のHP、パンフレットで説明に使っている表現でした。
イモムシはサナギになると、体の組織の大半をドロドロに溶かしてから再構築されますが、その期間は触ってはいけない、そっとしておかなければいけない、美容手術のダウンタイムも同じだ、ということですね。

人間にもまた、「サナギ」になって変態し新たな姿になって飛び立つような大事な時期がある・・・。
そんな「ダウンタイム」を描いた話でもあったのだと最後は気づいて、なるほどなぁと思いました。

面白かったです。
『地面師たち』『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』・・・と堪能した後、退会していましたが、また復活。
Netflix生活、秋の夜長の楽しみにしたいと思います。