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自分には理解できない感覚だ、としみじみ

孫娘が玩具のピアノをデタラメに叩くのに付き合って、一緒に弾いてみたりしているとき、よく娘と、娘が幼稚園生のときに通ったヤマハ音楽教室の話になります。

音楽教室では、ピアノを始めいろいろな楽器を演奏したり、歌を歌ったりしましたが、引っ込み思案だった娘は、一人ずつ皆の前で歌わされるのがとても苦痛なようでした。毎回、青ざめていました。
一度、『いぬのワシントン』という歌を一人ずつ歌うという課題のとき、曲の最初から最後まで先生がピアノ伴奏してくれているなか、両手のこぶしを握り締めたまま、口をへの字に結んで、怒っているような泣き出しそうな顔をして、終始仁王立ちをして終わった…ということがありました。
我が家で語り継がれている「いぬのワシントン事件」です(笑)
娘は、30歳を過ぎてもなお、慎重すぎる行動をすると「さすが、いぬのワシントン歌わなかった子は違うね」、逆に大胆なことをしてみせると「あの、いぬのワシントンを1音も歌わなかった子がね…」というふうに言われるのです。

で、その『いぬのワシントン』を、私が孫娘のピアノで弾いてみせたら、娘が「お母さん、どんな曲もハ長調に換えて弾くよね。逆に凄いと思うわ」と言うんですね。娘は絶対音感を持っている子なので、原曲キーで弾かないと/歌わないと、すごく不快な顔をするのですが、私はどんな曲もハ長調でしか弾けないので、うーーん、なんかごめん、というかんじになります。

え?『いぬのワシントン』は何の音で始まるのさ、と訊いてみたら、「30年前のことでよく憶えてないけど、たぶん、”レ” 」と言うんです。
ネットで音源を探したら出てきたのですが、聞いてみたら ほんとに “レ” で始まるので、さすがに驚いてしまいました。いま聞いた音が何なのか当てるのは分かりますが、30年前に聞いた曲も憶えてるのか…!と。
「そんなふうに、一度聞いた曲は頭に入ってるわけ?」と尋ねたら、まぁそうね・・・と言うんですね。
つくづく、そんな音感を持ってると日常生活も大変なんだろうな、と思いました。

話は違いますが、私がとても好きな(!)King Gnuの常田さんが、以前インタビューに答えてこんなことを話していました。
東京芸大中退で たくさんの種類の楽器を演奏でき 多くの名曲を生み出す、才能溢れる常田さん、どうやら彼の作る曲は、100数十~200の音を組み合わせている(一般的なJ-POPは30~50程度らしいです)そうなのですが、
彼は、自分が聞き取ることが出来る音のレイヤー数と、普通の人が受け取れる音の誤差を、King Gnuを結成してから 意識するようになった、自分の感覚と普通の人のそれとの違いに向き合う作業をするようになった、とのことでした。

自分の感覚が普通の人の感覚と大きく乖離しているということを理解した上で、”普通の人” に届く楽曲を作っている・・・、そしてそれは本当に多くの人に愛好されている、というのは凄いの一言です。『白日』の6億回を筆頭に、ストリーミング累計再生回数が数億回、という曲がたくさんあるんですものね。

つい、娘の「いぬのワシントン」の話から、好きな常田大希さんの話になってしまいましたが、普通の人と大きく違う感覚を持っている人(それゆえ苦労も多い人)のことを、近頃しみじみと想います。
それこそそれは「分からない」わけですが、何かに感動した時や、逆に、分からなさ過ぎて不快になったりする時は、そのことを想います。

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