小さい頃から「しっかりしてる」「手がかからない」「大人びている」「頼りになる」というふうに判断されて、子どもにとっての必要なケアや、守られ思いやられ育ててもらう・・・という大事な体験が、足りないまま大人になった、という人は、少なからずいると思います。
育った家庭の環境、親の事情や親性の低さ、親との相性など、いろいろな要因があるでしょう。
そんなふうに育つ子というのは、大人にとって “助かる” “頼りになる” 存在で、子ども本人にとっても、それが喜びだったり誇りだったりしますから、結局、あまり構ってあげない/構ってもらえないことが「問題」にならないまま、子は大きくなっていってしまいます。
大きくなった後も「問題」はなかったことでしょう。学校でも就職した会社でもやっぱり、手がかからない…どころか皆の役に立つ、よくできた子だ、優秀で期待される新人だなどと評価されがちです。周囲の気持ちを慮ったり期待に応えて活躍したりするのは得意なんですよね、小さい頃から。
怖い、悲しい、助けて、欲しい・・・は表現しないですから、”大丈夫な人” ということになっていることでしょう。
でも、そういう人の中には、じわじわと、あるいはあるきっかけで突然に、”見失って” 途方に暮れてしまう人がいます。
もっと頑張れるはずなのに進めない。虚ろな状態から抜けられない。どれもこれも違う。でも自分が何をしたいのか分からない・・・、というふうに。
かつての私もそうでしたし、そういう方たちのお話を伺うにつけ、思うことがあります。それは、こういうことです。
人って生まれながらに持っている欲求として「役に立ちたい」「認められたい」「自分らしく生きたい」というものがありますが、それらを叶えていくにはその前に、人生の始まりのところで、存分に満たされておくべき欲求があるんだよなぁ・・・、そこを強く作っておいてもらっておかないと、いずれ厳しいことになるなぁ・・・ということです。これは、しみじみ思います。
その「存分に満たされておくべき欲求」とは、有名なマズローの欲求5段階でいうと、1番目の「生理的欲求」と2番目の「安全欲求」のあたり・・・、心身ともに安全で健康でいられる環境で安心したいという欲求です。
これって とかく 当たり前に在るもの、叶っているものとして すっ飛ばして考えられがちですけれど、何事も「基礎」「土台」が大事なわけで、本当は貧弱、脆弱な基礎しか備えていないのに大丈夫ということにして、「社会的欲求」「承認欲求」さらに「自己実現の欲求」・・・を満たしていこうと思ったって、それはグラグラするでしょう、行き詰まるでしょう、もっと成長しよう!成就させよう!と上を向くほどに。
だから、そうなってしまったら、こう振り返ってみてください。
自分は人生の早い時期、無力な子どもだった頃に、安心して、子どもらしく無邪気に振る舞い、欲しいとか嫌だとか表明できていたか、何をしたって何をしなくたって無条件に、慈しんでくれた お日様みたいな温かい愛情をもった親が、自分をいつも包んでいてくれた・・・という実感を持って大きくなったか・・・。
そんなもん無かったけど支障ない・・・ということはないのです。あるレベルまでは「そこそこ上手いことやれる」かもしれませんけれど・・・。
もし、ご自身の「土台」の部分の弱さに心当たりがあるなら、基本的な欲求を抑え込んできた自分に気づいてあげてほしいと思います。
そこを見ていくことや、今からでもできる手当ての話、取り組み方について、一人では難しいと感じたときは、どうぞご相談ください。
じっくりお話うかがって、あなたがご自分の人生を、新たに切り開いていくお手伝いをさせていただきます。
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いま、NHKの連続テレビ小説『カーネーション』の再放送を観ています。本放送は観ていなかったのですが、「朝ドラ史上最高の作品」のひとつだと言われているのを知りまして。
主人公の糸子(呉服屋の娘。コシノ3姉妹のお母様がモデルですね)が少女時代に、見たこともなかった西洋のドレスに出会い、自分もそれを縫ってみたいと思って、一心不乱に “アッパッパ” を縫い上げたシーン、通りすがりのパッチ店で「ミシンというもの」を生まれて初めて見て心を奪われ、女学校を辞めてまで そこで働かせてもらう、そこまでの過程を描いたシーン・・・
私は、子ども のそういう「夢中」とか「熱」とか「ひたむきさ」に心打たれるのですが(気づくと泣いているパターンです…)、それは、そういう子どもでいられなかった私の憧れなのだろうと思います。
糸子の豪快で真っすぐな性質もありますが、糸子には「私が私であること」を認め、守り、育んでくれた家族の存在があったのだなぁ、羨ましいことだ、と思うんですね。
本当に大事なのです、子ども時代に安全な環境で愛される、という体験は。
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