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「10年かかったけど、やっと新しい人生を始められる気がしている」

初回かウンセリングは10年前で、以来 ときどき相談室をご利用くださっていた…というお客様がいます。Sさん(30代女性)。
Sさんは、初めてお会いした頃は まだ20代、お仕事をバリバリこなす、有能さが滲み出たビジネスウーマンでしたが、「いつも虚しい」「何をしても不全感が拭えない」のだということで訪ねてこられました。
何をどうしたらいいのか分からないけれど、きっといつか大問題になる問題を自分は抱えていて、このまま年を取るわけにはいかないと感じている・・・とも。

お話を聴き取った私は、私なりの「見立て」をお伝えして、有効と思われた幾つかの取り組みを提案して、そこからはぼちぼち…、本当にぼちぼちと、その方の心の深いところにある “救出と癒しを待っている部分” への働きかけを続けて来ました。月に2度会うこともあれば、来室が1年空くこともありました。

ダイエットや身体づくりがそうであるように、心、精神の問題も、ちゃんと取り組もうと思ったら、時間を掛けねば仕方がありません。”いきなり始めてモーレツに力を注いで瞬間的に出せる結果” というものには、大した意味がないです。
でも、ダラダラと長いことやっていても、目に見える成果が出せずに、結局やる気を失って放り出す…ということになりがちです。難しいです。

Sさんとのセッションも、振り返ると、熱の入れ方、その進み方、状態には様々な時期があって(10年間ですからね!)、カウンセリング、セラピーが行き詰ってしまうどころか、Sさんは会社を辞めたり、実家へ戻らざるを得なくなったり、重い うつ で床から出られなくなったり…と、私は関与、感知できない期間も幾度かありました。

そのSさんがこの度、1年以上ぶりに連絡をくださってオンラインでお話をしたのです。
一昨年に私がお伝えしていた「おすすめの課題」を ここまで進めました、というご報告だったので驚きました。そういったことからはもう離れてしまったかな…と思っていたので。

お話しできなかった1年余りの間にSさんは、何年も前に私に聞かせてくれていた、自身への「誓い」を守りながら、認知の修正、抑圧の解消、ICの育て直し、自由意思の形成・・・という、普通は独りでは嫌になってしまったり途方に暮れたりして出来ないことを、独りでコツコツと地道に進めていました。
そして、得ることが出来た達成感や安堵や新しく抱いた希望について、語ってくれました。

「自分には本当は子どもの時のやりそびれや傷つきがあって相当辛かったはずなのに、それを誤魔化して大人になってしまい、社会に出ると、まずいことに優秀・有能という評価を得てしまい、人生、これでイケる、と錯覚してしまった。
落第点も不合格の判定も取ることなく、本当は納得がいっていない人生を、いつまでも続けるところだった。そんなの違うよ、苦しいよ、と言っている自分の声を無視したまま、無理やり推し進めていくところだった。あぶないところだったと思っている」
・・・・・・というお話もありました。なるほど、そんなふうに振り返っていたのか…と思いました。

Sさんがすごかったのは、”引きこもり可能な実家” を利用して(=経済的な心配をしないで済む、安心・安全な環境を自分に用意して)、自分の心の声にひたすら耳を傾けながら、身に着けてしまっていた不要なものを捨てて捨てて捨てて、そして失われずに残っていたものが〈私〉なんだと確信して・・・という道のりを、何度心が折れることがあっても、外れなかった、というところです。
いろいろと失ったものはあったでしょうが、生まれ変わるために必要だった答えを、自分にもたらしてあげた、というところです。

普通、上に書いたように、ダラダラ続けるダイエットなんて失敗するし、気力を失った状態で引きこもったりしたら、その安全で快適な環境からの脱出は、なかなか難しいです。
でも、Sさんのそれは、前向きで戦略的でした。エネルギーの蓄え方、使い方が、とても上手だったと思います。

ぎりぎりの状態で通常運転を続けていたら不可能だと考えて、一旦、走るのをキッパリと止めて、静かに自分と向き合って対話するということ・・・、それは誰にでも出来るわけではないですね。
勤めを辞められない、とか、産んだ子どもが手元で日々育っている、とか、いろいろと事情はありますから、よほどでないと止められないでしょう。

でも、「このままではいやなんだ」「こうありたい、という自分に会いたいんだ」という強い思いに導かれたSさんのこの10年はやっぱり尊いなぁと思いました。

とことんやったから、良い意味での「諦め」がついたところがあって、清々しく「あの人はあれが限界だったんだ」「あの人もあの人の人生の途上にあるんだな」と、親御さんのことを受け入れることができたのだそう。
それで、他人(最重要の他人である親)を自然と許せたとき、初めて自分のことも許せたし癒しがやってきて、自分の愛おしさも、生まれて初めて感じることができた、ということでした。

30代にして凄いなぁと言うばかりですが、謙虚で賢明でエネルギッシュなSさんは、これからも新しいSさんとして地道に進んでいくことと思います。
一見、進んでいるようには見えない、心の深いところへの進歩ですが、外からどう見えているかとか、外向きの活動として何を成したかなんてことは関係なくなった人には、もう迷いはないことでしょう。

「10年かかったけど、やっと新しい人生を始められる気がしている」という言葉も聞きました。
「新しい人生」・・・幸せな人生に違いない、と思いました。

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