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こんなところに、バー『ルパン』

銀座のレンタルオフィスに移転して半月、とても良い環境で活動を再スタートできた幸運に感謝しているところです。

さて昨日のこと。いつもは 駅とオフィスの往復には並木通りを歩くのですが、みゆき通りを歩いていていました。
ふと露地奥に目をやったら、『Lupin』の看板・・・!!
驚いてしまいました。バー『ルパン』、オフィスの入るビルのこんな近くにあったとは・・・。

ご存知の方もいらっしゃるでしょうが このバーは、太宰治や坂口安吾といった文豪たちがよく訪れたというバーです。
太宰治がカウンターのスツールに座った写真は有名ですね。

私も、このバーへは 20代の前半、当時付き合っていた人に連れてきてもらって以来、その人とときどき寄らせてもらったものでした。
何度も来たはずなのに、どうしてここにあることに気づかなかったんだろう・・・
それはきっと 私が・・・(この私が・・・!)恋する女の子だったから・・・、その人と一緒のとき私は、いつもふわーーっと、ぼーーっと、していた・・・から・・・、じゃないかと思って苦笑してしまいましたが、看板を見つけた私は一瞬で、当時のことが次から次へと鮮やかに思い出されました。

 

その人は、ある地方都市の旧家の生まれで、何代も続く会社を継ぐことが決まっていて、東京へは、数年間の予定で勉強に来ていた人でした。
「ローマの休日」ならぬ「東京の休日」でもあって、私は、東京にいる間だけの恋人でした。期間限定。
生まれ育った世界が違いすぎる人で、「連れて帰るわけにはいかない」(結婚することはできない)ということは言われていて、それは承知していたはずなのに・・・、よせばいいのに相当好きになってしまったので、別離はとっても辛かったです。

でも、その人と体験したこと、その人から教えてもらったことはたくさんあって、今でも忘れていない良い思い出がたくさんあります。
普通の・・・いや裕福ではない家で育ち、庶民の暮らししか知らない私は、その人が生まれ育つ中に当たり前にあって愛していた「上等なもの」「高級なもの」、あるいは教養やものの考え方・・・、それらにはいちいち「ああ、自分はいま、住む世界の違う人と、何かの間違いで交流してるんだ・・・」ということを痛感することも多くて、どうしようもない寂しさも感じましたが、それを上回る驚きや楽しさが たくさんありました。
着る物、持つ物って、こんなふうに拘って良い物を選び、それを長く愛用していくものなんだ、食べ物も適当に摂ったりせず、一食一食こんなふうに楽しむものなんだ、クラッシック音楽や古典芸能って、こうやって堪能するんだ、「粋」ってこういうことなんだ、ほんとに育ちのいい人って、こういうふうにいろんなものを面白がり、敬意を払い、慈しむ・・・そういうことができる人なんだ・・・と、若かった私はひとつひとつに衝撃を受けながら学んでいきました。

衝撃。そうだ。恋って、衝撃のことだ(笑)
後にも先にも、恋愛であんなに揺さぶられた経験は、なかったです。

 

その人と銀座で買い物をしたり食事をしたりした後で、ちょっと飲む・・・という時に立ち寄るバーのひとつが『ルパン』だったんですね。
私にとっては、生まれて初めての銀座のバーで、美味しいカクテルやウィスキーと本物のバーテンダーに出会ったお店で、おまけに、太宰治がいつも座ったという席があり、その写真が掲げられていて・・・、うん、ぼーーっとしてしまうのも無理ないな。

 

・・・すみません、きょうは『ルパン』の看板を見かけたことをきっかけに30年以上前の思い出が どっと溢れ出した話でした。失礼しました。

そういえば・・・
娘が、こんな可愛いの見つけた♪ と買ってきた今年のカレンダーは『アタゴオル物語』のヒデヨシのカレンダーなのですが、アタゴオルの世界を教えてくれたのも、その人なんですね。
本屋でこのコミック本を見つけるや、「読んでみないか? 名作だ。きっと気に入る」(←こんな喋り方の人でした・・・笑)と言ってドサッと全巻買ってくれたのでした。

私が捨てずに持っていたその漫画を、娘も息子も子どもの頃、繰り返し読んでいました。
今でも大好きですね、名作『アタゴオル物語』と、愛らしい猫のヒデヨシ☆

2月のカレンダー。好物に囲まれて幸せそうなヒデヨシ。

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