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「ちゃんと自分の気持ち言えたばい!」と褒めたおばあちゃん

今週から始まった朝ドラ『舞いあがれ!』。
始まって間もなくから、なぜかちょくちょく涙腺にくるなぁと思いながら視聴してきましたが、1週間見終えて、そうか、そうだからか・・・と納得しました。
このドラマは、登場人物みんなの「相手を想う心」が胸に沁みるのですが、それらは、たとえば ささやかな日常生活のさりげない会話や、ふと見せる表情の中に丁寧に埋め込まれています。見せられるのは、そういう優しい世界です。
だからもう、何か大きな出来事が起きなくても、しょっちゅう泣くことになってしまうのです。

主人公の舞ちゃん、引っ込み思案で人の気持ちをよく察する優しい女の子ですが、すぐに “原因不明の熱” を出します。
お母さん・めぐみ(演:永作博美さん)は、自営の町工場の仕事に、二人の子どもの子育てに、と、何から何まで一生懸命にやる、抱え込み過ぎの人で、娘の “原因不明の熱” を心配し、何かと先回りをしてあれこれ言う、少々過保護なお母さんです。
観ている視聴者には、めぐみ のその心配や過保護であることが、もしかしたら舞ちゃんにはプレッシャーになっているし、熱を出す原因になっているのかも…と思った人もいたと思います。

母親の一生懸命な姿、しんどそうな姿、悲しむ姿は、繊細な子どもにとっては何より辛いものです。
自分のせいで大事なお母さんが苦しいと思ってしまうのですから、辛いのです。
だから、「お母さんをがっかりさせたくない」「お母さんに悲しい思いをさせたくない」という思いは、ときに、子ども自らが自分自身にかける 強過ぎる制限、縛り になってしまいます。
そういう苦しさや、あるいは親に気を遣って抑え込んでしまう自分の気持ちというのは、それを言葉で表現できない子どもの場合、 “原因不明の熱” として溜め込まれては発現する…。これは、めずらしくないことです。
子どもに限りませんね。口で言えない人は身体(病気)で表現するのです。

ドラマでは、身も心も疲れて潰れそうになっためぐみに、夫(演:高橋克典さん)は、舞を連れ二人でめぐみの実家、長崎の五島に、しばらく住んでみることを勧め、二人は五島へ渡るのですが・・・。

めぐみ と 舞 を迎えた めぐみの母・祥子(演:高畑淳子さん)、いいです。
ちょっとぶっきらぼうですが、娘と孫の状態と二人の関係性を直ぐに見抜きます。

あまりに過保護で娘の自由・自律を妨げてしまっている めぐみ に、お前はひとりで大阪の家へ帰れ、舞は自分があずかる、おまえは舞を心配しすぎている、気づいていないのか、舞はずっとお前の顔色を窺っている、舞はお前に遠慮して自分の気持ちを言えていない・・・と告げます。

一瞬反発しためぐみでしたが、ひとりになると素直にこれまでを振り返り、思い当たることを認め、舞を母親に託して大阪の自宅へ帰ることを決めます(偉いです。しんどかったと思います。自分は一生懸命やってきた、よかれと思って心を込めてやってきた。それが子どものためになっていない、有害かもしれない、と認めたのですから…。なかなかできないことです。)

母親が船で帰って行くのを、泣かずに見送った舞に、おばあちゃん・祥子は「よぉ頑張ったな」と声を掛けます。舞は、自分と一緒に居るとお母ちゃんしんどそうだから、私は帰れない、ここに残る、と涙しながら言いましたが、おばあちゃんは、優しく涙を拭ってやりながらこう言います。

「ちゃんと自分の気持ち、言えたばい!」

・・・いいシーンでした。
遮ったり否定したりすることなく、舞が自分の気持ちを語るのを黙って聞いて、言えたことを褒めたのです。
そんなおばあちゃんの存在と、五島という土地と、そこに生きる人たちとの出会いに、舞はきっと育まれていくのでしょう。

私は、自分自身が「親の顔色を見て親の気持ちを考えて、自由に出来なかった子ども」でもあったし、「一生懸命育てようと思い過ぎて子どもをコントロールしがちだった親」でもあったので、今週のお話は、大いに心当たりがあって身につまされ、重い気持ちにもなりましたが、来週からの物語が とても楽しみです。

私は、誰かが誰かを大切に思っていることがよく分かるドラマ、人の様子をよく見ている繊細な人が出てくるドラマが、とても好きです。それは「小さかった私の 欲しかった世界」なのだと思います。だから、癒されるのだと思います。

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