違和感を持つ方もいるかと思いますが、私はカウンセリングのとき「中立」「客観的」な立場でお話を伺うことをしません。
それは、「ずっと苦しんできた相談者さんにとって、私という聴き手の中立な姿勢や客観的な見解など、役に立たないか有害であるかしかない」ということを、経験上知っているからです。
たとえば、せっかく相談者さんがつらかった過去を語ってくれたときに、(先ずは理解し共感してみせたとしても)、「そのことの原因の一部はあなたの中にもあるかもしれませんよ」だとか、「あなたを傷付けたというその相手にも、やむにやまれぬ事情や思いがあったのでしょう」だとか、そんな表現はしないとしてもそういう意味のことを言ったら、相談者さん、どう感じるでしょう・・・。
おそるおそる、勇気を出して告白してくれたのかもしれないのに、ああやっぱり自分の弱さが悪いんだ、と思い、もういい、と失望して心を閉ざしてしまうかもしれません。
カウンセリングの目的を考えたら、カウンセラーが中立性や客観性を心掛けるというのは “違う” のです。
これは、カウンセラーとしての経験が浅かった頃の私が、つい、早く解決に向かってもらおうと力んで、客観的に正しいと思ったことを示してしまった、そのために相談者さんに信頼してもらえなかった、という失敗から学んだことですが・・・。
このことは、「カウンセラー 対 相談者」の場合もそうですが、「自分 対 自分(インナーチャイルド)」の対話においても大切なことです。
つらかった子ども時代のことを語り始めたインナーチャイルドというのは、大人のあなたを「信用していいのかな?」「味方してくれるのかな?」と、怯えながらも思ってくれたわけなので、
「お父さん、お母さんはそんなつもりであなたにそうしたわけじゃないと思う」とか「仕方なかったんだと思う」とか「あなたのそういう捉え方や態度が、事態を悪化させたところもあるよね」とか、そういうことを言ってはいけません。
ひたすら話を聴くことに徹して、絶対的な味方として無条件に肯定して寄り添い、安心させ希望を持ってもらうことが、時間はかかっても確かな成果を得て元気な大人として生き直す、第一歩になります。
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