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「どこにも自分がいないような空しい世界」

今期も何本かのドラマを観てきましたが、先週今週で最終回を迎えました。

そのうちの1つ、『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』。
学校モノはちょっとなぁ…と思いながらも、今の高校生、今の高校のクラスってどんな感じなのかしら・・・と思って見始めました。
卒業式の日、生徒に殺されるという未来を経験した女性教師が、1年前の始業式の日にタイムリープし、”2周目” の1年を、文字通り死ぬ気で生徒と向き合って教育に励むお話でした。

いろいろと難しい時代の難しい年頃の子どもたちとの関わり、その格闘は、見ていて「おぉ おぉ、これは大変なことだなぁ」と、辛くなってくるような場面もありましたが、生徒たちの言葉や行動はきっと、今の高校生をよく捉えているのだろうと思いながら見すすめました。

お話の中で嬉しかったことのひとつは、女性教師の九条先生(演:松岡茉優さん)が生徒たちに、亡くなってしまった生徒について受け止めることが出来ずにいた多くの生徒たちに、そのまま なんとなく、無かったことにしたり、忘れていったりすることを許さず、向き合うことをさせたこと、逃げずに考えることをさせたことでした。
また、生徒たちもそれぞれに、本音を語り、思い直すことをし、気づいて成長していく姿を見せてくれたことでした。

これは、私が好きな映画、2008年の『青い鳥』(原作:重松清、監督:中西健二、主演:阿部寛)でも描かれていたことです。
そう、受け止める力が育っていない子ども(子どもに限らず大人も…)は、たとえほんのりと罪悪感や悲しみを抱いたとしても、嫌な出来事を無意識に心から排除してしまいます。でもそこに、愛を持って踏ん張って立ち、導いてくれる大人がいれば、大きく成長してくれることがあるんですね。

それから、最終話で明らかになった(1周目で)教師を突き落とした男子生徒、星崎くん。
(これを演じたのは、映画『MOTHER マザー』で幾つもの映画賞を受賞した奥平大兼さんだったんですね。いい表現をする役者さんですね、感心してしまった。)

この男子生徒が、(2周目の)卒業式の日、再び九条先生のことを突き落とそうと現れますが、それを承知で待っていた九条先生に、静かに自分のことを語るシーンがありました。

自分はずっと我慢して来た。俺なりに一生懸命空気を読んで、自分を殺して…。でもそれに慣れてしまうと、周りが景色みたいに見えてくる。それも白黒の映画みたいに。それは、どこにも自分がいないような空しい世界なのだ、と・・・。

この感覚、この苦しさは、体験している若い人は結構いると思います。
大人びた感覚、感性と考え方を持っていて、でも、有無を言わさず所属させられた集団の中で、居場所を失わないように周囲に合わせているうちに、自分がどこにもいないような苦しくて空しくて堪らない・・・、これが永遠に続くと思うと恐ろしい・・・。

でも、そういう告白をしたときに、それはおかしいことじゃない、ということ、あなたは一人だけ大人なんだということを説いてくれ、もう少し一緒に、この世界を自分の好きなように楽しんでみませんか?と、傍にいることを伝えてくれる教師がいた、そういう大人と出会えた、というのは、本当に 幸いなことだと思いました。

また、嫌な予感に 先生と星崎くんを捜し 駆けつけてくれたクラスメイトたちの存在が、彼の心を動かして、”世界に色” を付けてくれました。

人は、何が辛いって、自分という存在が不確かで、無力で無価値に思われ、そして孤独であることです。
特に、変化が著しくて繊細でバランスを取るのが難しい時期の若い時というのは、そのことに負けてしまいそうになることもある。
でも、自分は受け止められている、理解されている、と思わせてくれる教師や友人に出会えていたら、そんな時期も やっていける、”抜けて” いかれるのですよね・・・。

思いがけず、考えさせられる良い作品でした。
今期は、盛り上がった『VIVANT』も、朝ドラ『らんまん』も、大いに堪能させてもらいました。
良いドラマに出会えることの幸せ、です。
そういえば昨日、息子が「もしやお母さん、『ミステリと言う勿れ』録画してたりする? ないか・・・」とLINEしてきたので、「ふふふ。ありますよ」と返したら、さすがドラママニア!と褒められました(笑)

 

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